自然派ワインについて
まだブームなのか微妙に感じるところですが、今月は俗に言う「自然派ワイン」の試飲会が多く開かれるような気がしています。
当店は「酒屋」でありながら、「自然食品店」でもあるためにヤマザキヤで扱っているワインは「自然派ワイン」だろうと考え来店される方も多くいらっしゃいます。
当店には確かに「ビオ・ワイン」や「無添加ワイン」と呼ばれている商品も取り扱ってはいます。
しかし、私自身は当店で取り扱うワインについて「オーガニック栽培」だからとか「無添加」だからという商品選びはしておらず、結論から言うと「自然派ワイン」へのこだわりは全くありません。
そこでお客様からは「何で自然食品扱っているのに自然派ワインには興味ないの?」とよく聞かれるので、私の見解をお話ししたいと思います。
まず最初に断っておきますが、私は「自然派ワイン」なるものを否定も肯定もしませんし、逆に否定も肯定もします。
もちろん、人が口にする物ですから安全であれば安全である程良いし、できれば原料となる葡萄も無農薬有機栽培が理想的ですし、SO2(酸化防止剤)の添加もしない方が良いと思っています。
しかし、「オーガニック」「無添加」という謳い文句や理想だけを追求するがあまり、ワインの本質を忘れてしまった生産者が増えてしまったような気がします。
彼等のほとんどは「売れる」ために商業的にいわゆる「自然派ワイン」を造っている生産者達であり、「ワインの質」よりも「ワインが出来る工程」をアピールする方が優先的で、世には「自然派ワイン」を謳った何ともお粗末なワインが数多く見受けられます。
小売店や飲食店の多くはこういったワインをいかにも良い物の様に販売し、マスコミにも持ち上げられ、一般消費者の方々は「自然派ワインてこういうものなのね」と納得してしまっている気がします。
こういった商業的な「自然派ワイン」を謳うものが多くなる一方で、『本当に美味しい自然派ワイン』を造る素晴らしい生産者達まで同じカテゴリーで捉えられてしまうのは耐え難い事実。
私がワインを選ぶ際に最も重視するのは「品質」。
「品質」が良ければ「自然派」であろうが何だろうが関係ありません。
これはワインだけに言えることではなく、日本酒でも食品でも言えることですが、そもそも、「良い品質」のものを造る生産者というのは必然的に『安全』で『健康的』な原料を使い、卓越した技術で丁寧に造っている物で、そのことはワインを飲んでみればストレートにわかりますし、彼等と話してみれば皆、それぞれにこだわりがあります。
葡萄栽培で言えば「オーガニック栽培した葡萄からワインを造りたい」ではなく、「良いワインを造るためには結果、オーガニック栽培が良かった」ということであり、
亜硫酸塩(酸化防止剤)で言えば「添加しないで造りたい」のではなく、「添加しないで良い状況の良いワインができた」のです。
詳しく書いていくとかなりの長文になってしまうので、ここでは省きますが、これらには逆の考えの生産者もあり、地理・気候条件も多く関わる中、「オーガニック栽培よりも適度な農薬や肥料を使用し、亜硫酸塩(酸化防止剤)を添加した方が良いワインが出来る」という考えの生産者も多くいます。
しかし、両者とも「品質の高い」卓越した生産者ならば「安全性」や「健康面」から見た差はほとんどないと考えています。
あるとすればわずかに計測されるか、もしくは計測不能なことも多いと言われる「農薬」や「亜硫酸塩(酸化防止剤)」の数値の差でしょうか?
個人的な意見ではこの数値の差は何の意味があるのか理解できません。
そもそも、無添加で造られたワインにも亜硫酸塩(SO2)は葡萄からの自然発生により含まれており、一般的なワインとの含有量との差は極わずかであることを知らずに飲まれている方も多いようです。
ここでもう一度断っておきますが、「自然派生産者」でなくとも良い生産者達というのは健康的な葡萄づくりをし、亜硫酸塩(酸化防止剤)の添加についても基準で定められたよりも驚くほど低く、極力抑えて使用されています。
私がここ数年の「自然派」ブームで気になるのはマスコミのいかにも「自然派ワインは健康に良く、美味しい」という記事。
一般誌の内容を読んでみるとビオ・ディナミ(生体力学)だろうが、ビオ・ロジック(有機農法)の生産者でも、全て「自然派ワイン」「ビオ・ワイン」「オーガニックワイン」「無添加ワイン」などと一緒くたにしてしまい、ワイン専門誌を除けば、詳しい違いなどを説明している物はほとんどありません。
そして、最も問題なのはこれらと「無添加ワイン」が混同されていること。
「無添加ワイン」といわれるものはその名の通り、酸化防止剤無添加でつくられたワインのことですが、「自然派(もしくはビオ)ワインを下さい。」とお店に来た方と話していると「自然派ワイン」の類はすべて「無添加」と思いこんでいる人が多く、更には一切農薬は使用していないと思いこんでいるようです。
そして、「無添加ワイン」を求める方は原料葡萄がオーガニックであると思う人も多い。
「自然派ワイン」を一言で言えば「自然になるべく近づけたワイン」と言えることができると思います。そして、それが意味することは「農薬」や「酸化防止剤」を全くしようしていないわけではないと言うことです。
しかし、以前にビオディナミの生産者と話していたのですが、彼は「自然というけどワインって葡萄栽培から人間の手による物なんだからそもそも自然なワインなんて無いんだよね。あるとすれば猿酒だよね。僕自身が自然派って言われているのに自分が一番その意味がわからないや」と笑っていました。
という事で私が「自然派」にこだわりがないこと、否定も肯定もしない意味がおわかりいただけましたでしょうか?
しかしながら一点だけ私が「自然派ワイン」の苦手な部分があります。
それは「還元臭」。
これは「臭」と付くだけあって良いものではなく、自然派ワインの多くに見られ、硫黄のような臭いで、私は大の苦手。
しかし、すべての「自然派ワイン」に出るわけではなく全くないものもあります。
この臭いはワインを醸造する際には必ず発生する物で、通常は発酵が終わると消えてしまう物なのですが、醸造過程もしくは瓶詰め時での亜硫酸塩(酸化防止剤)添加のタイミングや量の違い、そして熟成過程において完成されたワインでも発生することがあります。
また、人によってはビオディナミの生産者達が畑に使用するプレパラート(調合液)に加える硫黄に由来するのではないかという意見もある。
とにもかくにも個人的には特にビオディナミのワインにはとりわけ多く感じられます。
私がこの臭いを苦手なのもありますが、こういったワインは飲むのにはちょっとしたコツが必要であるために私の店では取り扱わないのが現状です。
しかし、最近では何を間違えたのかこの「還元臭」をプラスの要因としての「香り」と捉える意見もあるようで、私には全く理解が出来ません。
確かに経験上、イタリアの田舎で手づくりされたワインなどは造られたワインに硫黄を固まりのまま入れているところも多く、その土地の人達にとってはこの臭いがなければワインじゃないという人もいます。
それは郷土性ということで理解できますが、「還元臭」が「良い香り」となる捉え方は個人的に理解が出来ないのです。
好きな人にとってはくさやや納豆、なれ鮨のような感覚なのでしょうか?
長々と書いてしまいましたが、結論はこうです。
当店の取扱いの中には「自然派」もあります。
しかし、それらは「自然派」だから選んだのではなく「美味しかった」から選んだもの。
そして彼等は「自然派」を売り物にしているのではなく「品質と味わい」を売りにしているということ。
彼等は「良いワイン」を造るために突き詰めた結果が「自然派」と呼ばれるカテゴリーにたまたまはまっただけであり、彼等にとっては当たり前にやってきたことが、クローズアップされてしまっただけの話。
伝統的な生産者の中にもその長い歴史の中で当たり前に自然栽培、天然酵母発酵、亜硫酸添加抑制などを行ってきたにも関わらず、最近になってマスコミにそこの部分ばかりをクローズアップされているのは不思議でなりません。
当店のホームページでは私の見解をもう少し詳しく書いているので興味のある方はご覧下さい。
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