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あなたは日本のワインを飲んだことがありますか?~その弐

昨日までの続きで先日のシャトー・メルシャンのワインメーカー、安蔵弘光氏のセミナーを御紹介いたします。

P1010253 安蔵氏は5年間、シャトーメルシャン勝沼ワイナリーで経験を積んだ後、2001年~2005年までメルシャンがフランス・ボルドーに所有するシャトー・レイソンに赴任。

レイソンでは今まで日本では体験することのできなかったワイン造りの本質を体験し、更にはシャトー・レイソンを世界的な評価を得るまでに成長させることに大きな貢献をしました。

その大きな経験を生かし現在はシャトーメルシャンの中核として勝沼ワイナリーの更なる品質向上に貢献しています。

今回のセミナーは品質向上を続けるシャトーメルシャンが世界最大で現在のワイン市場を動かしている中核のワイン誌「ワインスペクテーター」が2年に一度開催している「ニューヨーク・ワイン・エクスペリエンス2007」に8連続招待を受けたことを記念して開かれました。

「ニューヨーク・ワイン・エクスペリエンス2007」は3日間に渡り、様々なイベントが開催されるのですが、ハイライトとなるのが世界の最高峰ワインを集めたグランド・テイスティング。

このテイスティングは参加費が250ドルもするのにも関わらず毎年、前売りで完売。

招待されるワイナリーはボルドー5大シャトー、ブルゴーニュからはルイ・ジャド、ルイ・ラトゥール、ジョセフ・ドルーアンなどの巨匠達。

イタリアからはガヤ、アンティノリ、サシカイア、オルネライア、アマ、マッセート、トゥア・リタなど最上の生産者。

スペインはヴェガ・シシリア、アリオン、カリフォルニア&オーストラリアからもハーランやペンフォールズを始めそうそうたる顔ぶれ。

まさにこれ以上ない贅沢なテイスティングパーティーなのです。

その中でアジア唯一招待されているのがシャトーメルシャンが誇るフラッグシップワイン「桔梗ヶ原メルロー・シグナチュアー」です。

こういった世界最高峰のワインと方を並べる「日本のワイン」はそのようなものか?

そういった期待が今回の参加へ至りました。

セミナーは山梨県と長野県の大まかな産地のテロワールの説明やフレンチオークの産地や特性の話。近年のシャトー・レイソンの高い評価へ至るまでの畑や設備の改革まで、かなり参考になる話ばかり。

こういった内容は安蔵光弘氏著『等身大のボルドーワイン』を読むと更に細かく把握できると思いますので、ここでは割愛します。

この本は安蔵氏がレイソンで過ごしたまさに等身大のワイン造りを本の中から伺え、私達、プロでもなかなか築かない視点で描かれており非常に参考になり、おもしろいのでおすすめです。

私が今回のセミナーで最も興味を持ったのは長野県と福島県のシャルドネについて。

シャトーメルシャンでは長野県と福島県を中心にシャルドネを栽培していますが、このテロワールの違いが非常におもしろい。

長野県では北信地区に千曲川を挟んで豊野と須坂・高山がシャルドネの産地。

右岸の須坂・高山地区は砂利質の扇状地、できるワインは非常にエレガントな仕上がりとなります。
左岸の豊野地区は粘土質の堆積地でボリューム感と厚みのある仕上がりとなります。

北信地区のシャルドネは毎年、右岸左岸の葡萄の状態を見てバランス良くブレンドされるのが特徴。

対して福島県の新鶴地区で栽培される葡萄はトロピカルな香りに溢れた芳醇なシャルドネが生まれます。

この地は北信に比べると葡萄栽培には厳しい環境の土地なのですが、新鶴の生産者は北信に負けたくないと10年ほど前に畑に雨よけの設置をさせてもらえないかと申し出た。

フランスなどでは人工的に雨よけをつけることは自然のテロワールを人為的に変えることになりその土地の個性をなくしてしまうためにこういった事を行った場合にはその土地のワインとして認定されない。

これには様々な論議がなされているが、しかしここはワイン法の整備されていない日本。

確かに「テロワールをそのまま表現する」という観点からはズレるのかも知れないが、世界の名醸地に比べて日本はワイン用葡萄にとってはかなり厳しい気候であり、結果、良質なワインができるのであれば良いのではないかと考えます。

第一、世界的にはワインの方向性が画一化に向かっており、土壌の改良を行うなどすでにテロワールの個性は消えつつある部分が多く見え、世界的には「テロワール重視」と「ワインの品質重視」と二極分化されているように感じます。

そういった現代に置いて、日本国内でもどちらの選択をしても結果的に素晴らしいものができれば良いのではないでしょうか?

それでも日本の生産者達は「テロワール重視」の生産者達だと私は信じています。

この北信と新鶴のシャルドネを比べるとそれぞれに個性が発揮され、テロワールの違いがハッキリとわかりますし、日本のシャルドネも世界のシャルドネに渡り合える品質になったと嬉しくなってきます。

こういった素晴らしい取り組みをしている生産者が日本にもいることを是非、皆さんにも知って欲しい。

ちなみに「ニューヨーク・ワイン・エクスペリエンス2007」に出展される「桔梗ヶ原メルロー・シグナチュアー2002」は本当に驚きの味わいだった。

これならボルドーのトップシャトーに十分対抗できる味わいだと確信したし、何よりも驚いたのはその個性。

かつて桔梗ヶ原メルローを口にしたときに感じたのは私の経験も少なかったからかもしれないが、すごい濃さで日本のワインと思えない出来だったが、同時にその凝縮感や濃さという物が不自然に感じられ、これが日本のワインだと言われても違和感だけが残った記憶がある。

それに対し、今回飲んだ「桔梗ヶ原メルロー・シグナチュアー2002」はしっかりと日本のメルローの個性がある。

私見だが、日本のメルローはボルドーのものと明らかに個性が違うように思え、香りの質などはむしろカベルネソーヴィニヨンを思い起こさせ、このワインもボルドーで考えるならば、右岸のワインというよりも左岸、特にサンジュリアンのような個性を感じさせた。

この不思議な感覚のおもしろさは日本のメルローならではのもの。

今回はその個性が非常に美味しく興味深い物に感じられ、昔に感じたような違和感のある濃さや凝縮感などは感じられず、エレガントで非常に良いバランスで仕上がっていた。

そしてついつい試飲といいつつもこのワインだけはグラス一杯を満喫して陶酔してしまいました。

高価なワインのためなかなか口にすることは難しいが、皆さんにもこういったワインが日本にもあることを是非、知っていただきたい。

これからも応援します!日本のワイン

追伸:先程、安蔵氏からメールをいただきました。私は大手、大手と言いながらもシャトーメルシャン勝沼ワイナリーのスタッフはわずか15人程度とのこと。
ワイナリーを訪れるとその大きさからそんな少人数で運営しているとは考えもしていなかったです。
そういった規模だからこそこれからはお客様と顔の見えるワイン造りをしていきたいとのことです。
私もイメージに惑わされていたようですね。スイマセン。

P1010255 ※安蔵光弘氏と一緒に

P1010256 ※著書にちゃっかりサインもいただきました。

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