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2007年7月28日 (土)

ワインと日本酒はどっちが安い?(後編)

さて、前回はワインの価格について書きましたので、今回は日本酒です。
前編はこちら

日本酒の原料は米と米麹、「純米」とつかないものにはそれに醸造アルコール、安価な大量生産のパック酒には糖類や酸味料も使用されます。

当店では糖類や酸味料といった添加物を使用した商品は扱っていませんので、当店取扱いのお酒は米と米麹、一部に醸造アルコールとなります。

話はそれておきますが、ここで醸造アルコールに触れておきますが、よくお客様から「醸造アルコール」を使用した日本酒は「臭い」とか「飲みづらい」とか「品質が低い安酒」とかいうことを耳にしますが、これは全くの誤解です。

醸造アルコールを添加して造られる「吟醸」「本醸造」といったお酒は飛び抜けた日本酒技術の一つであり、本来、醸造用アルコールは「香り」「味わい」を整え、過度な熟成を抑えるために必要であって、決して量を水増ししたりするようなものではありません。

近年は技術も上がり純米酒でもスッキリとした飲みやすいタイプが増えていますが、本来は醸造アルコールを添加した、いわゆる「アル添酒」の方がフルーティーな香りでスッキリと飲みやすいものが多いです。

その証拠に当店主催のお酒の会などで様々なタイプを織り交ぜ参加者の方々にどのお酒が一番美味しかったかとアンケートを取ると本醸造や普通酒が一位となる場面が多々あります。

本来あるべきの「アル添酒」を飲まれたことのない方が、初めて飲まれたときの感想の多くは「飲みやすくて飲み飽きしない」「フルーティーで爽やか」「食事とあわせやすい」「もっとお酒臭いと思っていたのに全然違う」などなど高評価が多いです。

なぜ、このような「アル添酒」に悪いイメージがついてしまったかというと、それは戦時中、軍人達を活気づけるために日本酒は振る舞われていたが、食糧不足の折、生産できる酒は極わずか。それを補うためにアルコールを足し、水で薄め日本酒としていました。
食糧不足が続く、戦後にもいわゆる「三倍醸造酒(アルコールや添加物を添加し三倍の量が生産できる酒)」として貧困な時代を過ごした一般国民達にもそのまま指示され、急速に復興し、段々と発展を示してきた時代になっても大手メーカー達は原価コストが掛からず、大きな儲けを手に入れることのできる「三倍醸造酒」を作り続けていきました。

現代ではここのまで酷いのはあるかどうかはわかりませんが、ほぼ近い感じで「儲け」重視の酒は多く見受けられます。

こういった酒達によって本来の「アル添酒」達も同じカテゴリーに考えられてしまい、イメージの悪さを定着させていきました。

また、近年は健康志向ブームも手伝い、「何も添加物が入っていない」という概念だけで、「純米酒」が良くて「アル添酒」は悪いという間違った知識が定着してしまいました。

「純米酒」も「アル添酒」もそれぞれに違った良さがあります。
決してどちらが良くてどちらが悪いというものではありません。
皆様もシーンや好みに合わせてお楽しみ下さい。

さて、話を元に戻します。

日本酒の原料は根本的には米と水です。

水は大抵、蔵の近くに湧き出る水を使用するので、コストはほとんど掛かりませんが(中には遠方より輸送するなどコストの掛かるところもあります)、原料の米は結構、高額です。

日本酒造りには私達が普段口にしている「飯米」ではなく、酒造りに適した「酒米」が使用されます。
数ある酒米の中でも最も知られる酒米の王様が「山田錦」。

ただ、一口に「山田錦」といっても産地や品質によって等級が分けられ、上から下まで本当にピンきり。

ご存じの通り、毎年、米の価格はかなり変動をしますが、「山田錦」のような酒米は穂の背が高く、風に弱く倒れやく、栽培にも非常に神経を使い、作業コストがかなり掛かってしまう上に、利益面では農家からすると飯米の方がリスクが少なく、儲かるので栽培する業者も少ないです。

ですから、原価的には1kg当たり400~500円ぐらいでしょうか?
有名ブランドの米などと大体同等の価格かと思います。

ただ、これは玄米の価格ですので、米のほとんどは削られてしまうので、大吟醸クラスの50%磨きでしたら倍、35%磨きの大吟醸でしたら約三倍と跳ね上がっていき、精米に掛かるコストもバカにはなりませんので、かなりの金額に跳ね上がっていきます。

ここでとりあえずお米だけの原価を見ていきましょう。

最近では純米酒レベルでも55%など高精米が当たり前になってきましたので、当店で最も売れている2,300円の特別純米酒を例に取ってみていきます。

日本酒一升分で精米した状態で1kg以上は使用しますので、玄米の約1.82倍位を使用ということで玄米の原価450円として819円。

2,300円の内、最初の原価が35%を超えているので結構なものですね。

自家精米をしているところなどは当然の事ながら自家精米機を所有しており、この機械がウン千万(本当かどうかわかりませんが、億という話も聞いたことがあります)するので、このコストも半端ではないです。

原料コストが大体わかったところで『造り』を見ていきます。

日本酒の醸造法は『並行複発酵』と呼ばれ世界でも類を見ない日本が誇る日本酒特有の高アルコールを生む醸造方法であり、同じ醸造酒のワインやビールと違い複雑な醸造工程で非常に手間が掛かるものです。

(ここでは詳しい醸造工程は省きます)そのため各工程に人手が掛かり酒造りのシーズンは休みなしで昼夜働き通し、当然、かなりの人件費が掛かります。

そして、その設備投資も大変なもので、コンピューターで温度管理等をこんとろーるできるような最新設備を導入していればそのコストも半端ではありません。

お酒は約2週間から30日間かけられ発酵し、搾り、完成となりますが、それで終わりではありません。

『熟成』という大切な作業が残っています。

日本酒は一般的に「しぼりたての方が美味しい」という先入観があるようですが、これは大きな間違いで、ワインと同じように早く飲んだ方が美味しいものと熟成させた方が美味しいものとのタイプに分かれます。
そしてワインと同じく、酒質のしっかりと造られた高品質な日本酒には『熟成』は必要不可欠で、最も良い状態になるには秋までの約半年から当店で扱っているお酒の中にはレギュラーの純米でさえ2年近く寝かせて飲み頃を迎えてから出荷する蔵まであります。

この『熟成』は通常、ゆっくりと低温で行うために冷蔵管理でコントロールされますが、この電気代がまた凄いんですよね。

当店の管理もそうですが、冷蔵庫の電気代は本当に大きなコストとなっています。

5年、10年と寝かせる古酒などに掛かる電気代を計算すると恐ろしいですね。

さて、お酒も出来上がって出荷となるのですが、最後にラベル貼り等にも人手がいりますよね。
この作業、小さな所ではほとんどが手作業で、蔵に行くとおばあちゃんやおじいちゃんが慣れた手つき次々とラベルを貼っていくのですが、何か楽しそうなんですよね。
でも、結構、大変な作業なんですが。

そんなこんなで日本酒が完成。

最初から35%も掛かっている原料コストにその後、どれだけのコストが掛かっていったでしょうか?

にも関わらず、日本酒の値段は4合瓶(720ml)で見ていくと600円ぐらいのものからせいぜい最も高いものでも5,000円。

この値段、皆さんはどう思われるでしょうか?

次回は『ワインと日本酒はどっちが安い?』の最終回をお送りいたします。

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