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自然派ワイン、自然酒を考える

近年、人気が高いというか話題となっている「ビオディナミ」や「ビオロジック」による「自然派ワイン」「ビオワイン」「オーガニックワイン」、日本酒の世界では有機栽培された原料米から手づくりで造られた純米酒である「自然酒」または「天然酒」。

当店が「酒と自然食品の店」を謳っている以上、避けては通れない道です。

私の「自然派」に対する意見はホームページ上で記載しているので、このブログでは書く必要はないかなと思っていたのですが、先日、「自然派」の生産者のセミナーに出席する機会があったために思い立ってみました。

まずは私の「自然派」に対する意見ですが、長文になってしまうので不精して、ホームページ上のページをご覧下さい。

ヤマザキヤホームページ「自然派ワインと日本酒についての見解」

読んでいただければわかりますように私はお酒を選ぶ際に「ビオ」や「自然派」であることは一切こだわっておらず、「品質」のみを判断基準としているために私が扱っている物は「自然派」に当てはまる物もあればそうでない物もあります。そして大抵の場合は「自然派」を謳っている生産者は逆に倦厭してしまうことが多いです。

事実、品質の高いワインを選び出した場合、その多くは有機栽培を実施しており、亜硫酸塩(SO²)の添加も最小限に抑えているところがほとんどです。

そもそも、健全ではない葡萄から「作り」、亜硫酸塩(SO²)の大量に入ったワインは鼻を突くような匂いと軟弱な酒質、チグハグで不自然な味、そしてキレと後味の悪い余韻で飲めた物ではありません。

良い(特に伝統的な)生産者は当然の事ながら栽培から徹底的にこだわっているわけで、古くからずっと行っている「当たり前」のことだから特別、公表することなどしていないと言うことがよくあります。

例えばかのロマネ・コンティやサンテミリオンの最高峰であるシャトー・オーゾンヌなどは良い例で長い歴史の間、有機栽培で葡萄を育ててきていますが、そんなことは公表するまでもない「当たり前」のことなのです。しかし、そういったことを知る由もない一般消費者達にいかにも「安全だから美味しい」というような戦略的なイメージを「売り」にしている生産者達の方が「身体によく、美味しい」と思われてしまっている現在の市場には少し疑問を感じてしまいます。

そんなところで先日のセミナーのお話し。

今回のセミナーはイタリア北部、フリウリ・ヴェネツィア・ジューリアで「ボルク・ドドン Borc Dodon)」というワインを一人で造っているデニス・モンターナー氏の講義。

Dodon ※(写真)デニス・モンターナー氏

彼は畑には化学肥料を与えず、除草剤も殺虫剤も長い間使用していません。

発酵はすべて空気中の天然酵母を葡萄果汁が自然に取り込み、自然と発酵するのを待つ、いわゆる「天然発酵」でワインを造っており、亜硫酸塩(SO²)の添加も最小限に抑さえ、まさに今言われている「自然派ワイン」の造り手です。

彼のワインは以前に2度ほど口する機会があったのですが、その2回とも感じたのがいわゆる「還元臭」とか「ビオ臭」といわれる「自然派ワイン」独特の香りが感じられました。

こういった香りは時間が経つにつれ抜ける物なのですが、ワインによっては1時間ぐらいで抜ける物から2~3日間は抜けない物まで様々です。

私はこの香りが苦手で、この香りが抜けたら美味しくなるのが分かっていても決して自ら手を出すことはありません。

手を出さない大きな理由の一つは、その「時間」にあります。

いわゆる「ビオ臭」が抜けるまでに数時間から数日の「時間」が必要となってくるわけですが、欧米は置いておいて日本人の性格からいってほとんどの方々は購入したワインは持ち帰って、飲む直前に抜栓し、すぐに飲んでしまうのがほとんどです。

現実に統計から日本人がワインを購入してから飲むまでの期間は世界で最も短いという結果が公表されています。

「ビオワイン」でなくとも「抜栓直後は硬く、香りも閉じている」ワインの場合には「飲む○時間前に抜栓してください」と私もお客様にアドバイスするのですが、大抵の場合は「そんなのめんどくさい。飲みたいときにすぐ飲めるのがいいから選び直して」と言われることが多くあります。

確かにお客様の言うとおりで、前々からこのワインをこの日に飲もうと決めているのであれば良いのですが、ほとんどの場合は「何かワインが飲みたくなったから開けてみようかな」といった感じだと思いますし、実際に私も普段の生活の中ではそういったシチュエーションが多いです。

また、レストランの場合でも何時間も時間を掛けて食事をできる店であればよいのですが、日本の場合はほとんどが回転率で計算されているために早め早めに食事が進んでいきます。そんなところで「このワインは3時間後が飲み頃ですので」と言われても困りますし、レストランの方も何時間、もしくは何日も前から売れるか売れないか分からないワインを抜栓しておくわけにはいきません。

ですから私は商売上で「自然派ワイン」を扱う場合は「すぐ飲めるのか?」ということが最も重要な要素として考えております。何故か「自然派」を全面に出していない生産者の場合はすぐに飲める物が多いのですが、「私は自然派です」と謳っている生産者のワインは飲めるまでに時間が掛かる物が多いように思えます。・・・不思議ですね?

と少し話がずれましたが、このセミナー時に出されたワインはほぼ完全に「ビオ臭」は抜け、「若さ」を別にして飲み頃の状態で目の前に注がれました。

Dodon_b まず出されたのは白が四種類。

今日はワインの詳細は省きますが、どれも非常に興味深いワインで、天然発酵によく見られる茶色くなったリンゴのような香りは感じられましたが、 深さと幅を感じる味わいながら非常に柔らかく優しい印象の素晴らしい物でした。

特に注目すべきはその色合いでデニス・モンターナー氏は通常は赤ワインで行われる皮と果汁を一緒に漬け込み皮からの色素や旨味成分、タンニンを果汁に溶け込ますマセレーション(かもし)を行っており、一番右のワインなどは非常に濃い色合いをしています。※このワインは非常に興味深いのですが、ご説明はまた今度。

Dodon_r 次は赤ワインが三種類。

これらも白ワインと同じく柔らかく優しい味わい。

この地方にありがちな特出した酸や物足りなさは感じられず、上質なタンニンを持った柔らかな厚みが非常に良かったです。

即にカベルネフランとメルローのブレンドによる物は今では少なくなってしまったサンテミリオンの伝統的スタイルと飲み易さを感じたのは私だけでしょうか?

テイスティング後にデニス・モンターナー氏に質問をする機会があり、私はいくつか伺いたいことがあったのですが、他にも質問者がいた上に会場の時間も残りわずかだったために一つだけ質問しました。

それは「天然発酵」に関すること。

私が知る限りの「天然発酵」を試みている生産者達を見ていると「天然発酵」というものは何とも不安定で、いつ発酵が起こるかもどういった発酵が起こるかもわからず、時には発酵は起こらず腐敗してしまったということもよく耳にします。

イタリアのみならず世界中から注目を浴びているデニス・モンターナー氏でもそういった失敗があるのかともし失敗した場合の果汁はどうするのかを聞いてみました。

彼は妙なこと聞くなと苦笑していましたが、こう答えてくれました。

「天然発酵は全くコントロールの効かない物で、私は手の出しようがない。私のワイナリーでは発酵は100%起こるが、発酵しすぎることが多く、ワインとして成り立たない物ができてしまうことが多い。そんな時は残念ながら捨ててしまうしかないんだ」と。

私はこの答えにもの凄く色々な疑問が湧いて彼と色々な話をしたかったのですが残念ながら時間もなく終了。

私が思ったのは彼が手間の掛かるビオロジック(有機栽培)で自分の子供の様に育てた葡萄からつくった果汁を天任せの「天然発酵」という方法を選び、失敗したときは捨ててしまうなんて何とも「自然」と反していると思ったのです。なんせその量はかなりの量になりますしね。

恐らくは彼の葡萄は素晴らしいと思いますので、天然酵母でなくともキッチリと発酵させてワインを造れば良いワインが生まれると思うのです。

自然恵みを人間の手で完成させる。それが「ワイン」なのではないかと思うのですが、皆さんはどうお思いでしょうか?

否定的なことも書きましたが、彼の「自然栽培」に対する思いは熱く、本気で感銘できる物です。

私はイタリアに初めて行ったとき畑の素晴らしさを見て、「これみんな無農薬有機栽培なの?」と聞いて農家の人に「何言ってンだこの日本人?当たり前じゃねぇか!イタリアはどこ行ってもみんなオーガニックだよ!」と言われ、私はイタリアの土壌はすべて荒らされていない有機土壌だと信じていたのですが、彼の話で全く違うことがわかりました。

彼がビオワインを造り始めたのは「売れるため」でも何でもなく、おじいさまへの強い思いから始めたそうで、おじいさまの時代は日本も同じですが、どこでも有機栽培でしたし、今のような農薬も無かったために自然と無農薬栽培であるのが当たり前でした。

しかし、第二次世界大戦の始まりと共にイタリア政府は全国に作物をどんどん作るように命令を下し、薬を使用した大量生産を国民に強いました。

その結果、イタリア全土の土地は見るも無惨な状況となってしまい、今でも利益重視の「大量生産」の農業が大部分を占めるとのことです。

その事実をおじいさまより聞いた彼は戦前の健全な土で、その当時の造り方でワインを造り続けたい。

このワイン造りは伝統であり、「イタリア人の誇り」であるという思いからだそうです。

当店ではこのワインは扱っておりませんが、こんな彼を応援する一人でいたいと思っております。

※お時間をいただけましたら取り寄せは可能です。

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